「女のあんたに何ができるね？」

20代で起業の準備をはじめた喜屋武 文子（きゃん あやこ）さんに、最初、同業他社は好意的ではありませんでした。当時漁業組合の組合長だった父親からの勧めもあり、釣具店を経営することになった喜屋武さん。良い関係を築くために、離島を含めた県内全ての同業者に挨拶まわりをしたことで、少しずつ応援者が増えていきました。
その後、母親から民宿業を受け継ぎ、さらにお弁当屋さん「きたなか荘弁当」（現在は娘さんが引き継いでいます）を開業。

行き場のないトマトを加工品に

ある日、商工会の女性部に所属している喜屋武さんのもとに“行き場に困っているトマト”についての相談が舞い込みました。そのトマトは、EM農法で育てられたZ農園の中玉トマト（EM農法は乳酸菌や酵母など、自然界にいる複数の微生物を組み合わせた善玉菌を利用して土づくりをし、農薬や化学肥料の使用量を減らして作物を作る農法のこと）です。

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当時日本では「トマトは生で食べる」という考え方が一般的でしたが、熟してしまったトマトは日持ちがしないため、喜屋武さんは加工品にすることを提案。そうすることで賞味期限を延ばすことができるからです。

熟したトマトを1/3の量になるまで約4時間煮込み、その後、玉ねぎや喜屋武さんが育てているニンニク、赤ワイン、オリーブオイル、ハーブ、鰹節を加えてさらに1時間煮込みます。「素材本来のおいしさを活かしたい」と、着色料や香料、保存料は使用せず、試行錯誤を重ねて安心安全なトマトソースを完成させました。

この1瓶の中には、9個分のトマトが凝縮。マンゴーと同等の糖度11度のトマトを使っているため、濃厚な旨みと深みのある甘さが感じられます。

売れないトマトソースをさらに値上げした理由

現在１本1,080円（税込）で販売されているトマトソースですが、実は発売当初の販売価格は500円でした。それでも「高い」という理由から売れず、味には自信があった喜屋武さんは「手に取ってもらえるようになるにはどうすれば良いか」県外の6次産業化アドバイザーに相談。その際、アドバイザーから「どこで販売したいのですか？」と問われ「銀座のわしたショップ」と答えた喜屋武さん。

その答えが、ラベルと価格の変更でした。「500円から更に高くするなんて、驚きました。こんな価格設定にしてしまって、本当に売れるのだろうか？と、最初は半信半疑でした」

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現在、銀座のわしたショップ（2023年2月に有楽町に移転）以外にも県内外で販売し、ふるさと納税の返礼品にもなっているきたなか荘弁当のトマトソース。倍の値段に値上げをしても、生産が追いつかないぐらい売れている人気商品となっています。

パッションフルーツの入った万能ケチャップ

北中城村産のパッションフルーツが16%入ったトマトケチャップも人気で、こちらは2022年10月に特産品コンテストで奨励賞を受賞しました。オムライスはもちろん、お肉の煮込み料理やステーキにかけたり、お魚のソテーに添えたり。お味噌汁にプラスすると、濃厚でリッチな味わいになるので、試してみてはいかがでしょうか。

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「お子様からご年配の方まで幅広く食していただきたいです。これからも“食卓に笑顔を”をモットーに“おいしい”をさらに追求していきたいです」と喜屋武さん。

 

北中城村自慢のトマトを贅沢に使用したトマトソースとケチャップを、あなたも味わってみませんか？

 

 

 

沖縄CLIPフォトライター 舘 幸子　http://okinawaclip.com/ja/detail/1533