安座間珈琲

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コーヒーをきっかけに、目指すは架け橋農園「安座間珈琲」

父親の旅立ちを機に知った沖縄産コーヒー

 

「いつか沖縄産のコーヒーをたくさんの人に届けたい」

そんな思いのもと、地元・北中城村(きたなかぐすくそん)の畑でコーヒーの木を育てている「安座間珈琲」の安座間敏幸(あざまとしゆき)さん。

島を出たのは、中学校に進学するころ。九州で中学高校時代を過ごし、東京の大学へ。そのまま就職して東京で暮らしていましたが、「自然に囲まれた環境で暮らしたい」と、長野県佐久市へ移住。「自分の家の先は山しかないような、自然豊かなところ」という場所から会社へ通勤しながら、農作物の栽培を行い、ほぼ自給自足に近い生活スタイルを送っていたそうです。

 

そんなとき、沖縄に住む父親から一本の電話が。

「こっちで一緒にコーヒー栽培をやってみないか?」

「突然何を言ってるのか?と驚きました。聞くと、家の近所に自分で畑を作ってコーヒーの木を育てている、と。親父は公務員だったので、どうせ遊び半分でやっているんだろうと思ったし、もう長い間離れて暮らしている分、どこか親に対する反発心もあって、ろくに話を聞かず電話を切りました。でもその後しばらくして、親父が亡くなって。それを機に実家へ帰ったとき、親父がどれだけ真剣に珈琲栽培に力を注いでいたかを母から聞きました。できた豆は、あくまで自家消費だったようですけど、知り合いに配ったり、家の台所でフライパンで焙煎して飲んだりして楽しんでいたようです」

 

 

父親の旅立ちを報告しようと向かったのは、祖父のお墓がある南米ペルー。安座間さんのお祖父さんは、かつて移民としてペルーへ渡り、その地に骨をうずめたそうです。迎えてくれたのは、たくさんの親戚。ペルーで支え合って暮らすウチナーンチュたち。

「僕が幼いころに接していた沖縄の伝統文化、人の優しさ、誠実さ、あったかさ、助け合う心。ペルーには、昔ながらの沖縄が残っていて感激しました。親戚のおじいおばあには、『人には生まれてきた意味がある。ちゃんと役割があるんだから、自分勝手なことはやめなさい。自分の生まれた沖縄に戻りなさい』と諭されて。そこで大切なことを教えられた気がして、沖縄に戻る決意をしました」

 


 

長野県の仲間と一緒に始めた畑づくり

 

帰郷を決めたものの、さて、沖縄でいったいどうやって暮らすか。長野県に戻り、行きつけのカフェでそんな話をしていると、オーナーから、ふと沖縄のコーヒーの話題が出たため、「実は、父親がコーヒー栽培をしていたそうだ」と伝えたところ、かつて父親が使っていた畑を一緒に見に行こう!と盛り上がり、さっそく沖縄へ。畑は、長年放置され荒れていましたが、「ここでコーヒーを作ろう。応援する!」と高塚さんに背中を押され、コーヒー栽培の土台づくりが始まりました。

「長野の会社をすぐには辞められなかったので、休みの日を使って沖縄に飛び、畑の雑木や雑草を刈りとる作業を続けました。高塚さんはもちろん、カフェの仲間も一緒に沖縄まで来てくれて。まさか自分が親父から畑を受け継いで、コーヒー栽培をするとは思わなかったけど、みんなが一緒に頑張ってくれて、助けてくれたおかげです」

 

自然豊かな長野で暮らした経験から、こだわりは環境への配慮。オーガニック農法を目指して畑を整備し続け、無事、有機JASマークの認証を受けることができました。とはいえ、安座間さんの畑で栽培したコーヒーを量産できるようになるまでは、まだまだ長い道のり。かつてのお父さんがそうであったように、自分たちで飲む分だけ、たまに特別な出店のときだけ提供できるというのが現状です。より良い沖縄のコーヒー豆を作り、生産体制を確立するにはどうしたらいいか。そのために、沖縄でコーヒー栽培に取り組む先輩方にアドバイスをいただいたり、「沖縄珈琲生産組合」に所属し、組合員の方々と一緒に研究を進めているそうです。

「本格的に始める前、沖縄でコーヒー栽培をする難しさを先輩方から聞いて、それでもいつかは……と頑張れているのは、親父の思いを継ぎたいというところもあるかもしれません。自分の地元で育ったコーヒーをみんなが『おいしい』と喜んでくれる笑顔を楽しみに、日々頑張っています」

 

 


 

人と地域のつながりが表現された商品たち

 

安座間さんが取り組んでいるのは、コーヒーやバナナ、パッションフルーツなど熱帯フルーツの生産と、加工、販売を行う6次産業。農業をしながらお店を営むスタイルで、2014年「安座間珈琲」をオープンしました。

 

 

取り扱っている主な商品は、ペルーで栽培されたJAS認証オーガニックコーヒー。たくさんの親戚を通して出会えた現地の農家さん、そしてコーヒーの味に感銘を受け、その魅力を伝えたいと、生豆で仕入れ、自ら焙煎し販売しています。「ペルーのコーヒー豆は香り高いのが一番の特徴」と安座間さん。ほどよい苦みとしっかりとしたコクがある「モンターニャ・ベロニカ」は安座間珈琲の看板豆です。

 

 

ハンドドリップで煎れたコーヒーをテイクアウトできるほか、自家栽培のフルーツを使ったジェラートなども販売。収穫したパッションフルーツを甘みが増すまで追熟し、コーヒーとソーダで割る「パッションコーヒーソーダ」は、甘さと苦み、炭酸の爽快さが絶妙です。

 

地域の人とつながりを生みだすことも、安座間さんのこだわり。北中城村をイメージして作ったオリジナルブレンド「北中城ブレンド」や、琉球王国時代に活躍した名将で、中城(なかぐすく)城主だった護佐丸(ごさまる)に思いを馳せブレンドした「護佐丸」など、地元への思いをこめた商品が並びます。

 

 

パッケージラベルにも、思い入れがこもっています。常連の女性のお客様が、「安座間珈琲」のために描き下ろしてくれたという絵を起用した「エスペランサ」、「アルトアマゾン」をはじめ、沖縄のラテンバンド、ディアマンティスのリーダーで、日系ペルー三世のアルベルト城間さんが世界遺産を描いた「マチュピチュ」など、美しい絵が目を引く魅力的なラベルがそろいます。

 

 

地域のご婦人が手作りしたという珈琲の麻袋を使ったギフトバッグや、奥様が手描きしたドリップバッグなど、あたたかみあふれるアイテムも。ドリップバッグには、日常的なウチナーグチ(沖縄の方言)や、沖縄に古くから伝わることわざ、黄金言葉(くがにことば)が書かれていて、ギフトにもぴったりです。

 

 

 

バルーンに想いを乗せて未来への架け橋を

 

昔から変わらず、応援してくれる長野県とのつながりも「安座間珈琲」にとって大事な要素。お店では、仲間の農家さんが大切に育てた玄米やりんごなど、直送された長野県産のおいしいものと出会えます。今でも年に2回、長野県を訪れるという安座間さん。その理由は、熱気球(バルーン)の大会に出場するため。実は、長野県佐久市に住んでいたころ、町おこしの一環として行われていた熱気球大会に興味を抱き、熱気球操縦士の指導者免許を取得したのだとか。

 

「熱気球って、夢があるというか、ファンタジーな感じがあって素敵ですよね。以前、北中城村でも体験搭乗を開催したことがあります。子どもたちが大喜びではしゃぐのを見て、やっぱり一番は子供たちに喜んでもらうことがしたいな、と。未来にたくさんの笑顔が生まれてほしいなと思います。オーガニックの畑で土と触れ合う体験や、薪割りをしてアースオーブンでピザを焼いたり、コーヒーの焙煎体験をしたり。これまでもいろいろ子どもたちが楽しめる機会を作ってきましたが、今後はますます、そういう体験教室に力を注いでいきたいですね」


写真提供:安座間珈琲

安座間さんが大事にしたいコンセプトは「架け橋」。沖縄とペルー、全国各地の応援してくれる仲間たち、大人から次世代の子ども、沖縄産コーヒーの今と未来。「安座間珈琲」から、さまざまな架け橋がつながっていきますように。そんな思いを乗せ、平和にアーチを描くイメージで、熱気球をお店のシンボルにしたそうです。

 

 

「安座間珈琲」に、ひとり、またひとりとお客さんが訪ねるたび、弾むゆんたく(おしゃべり)。香り豊かなコーヒーを味わいながら、安座間さんが今、思い描く架け橋のお話を聞きに是非立ち寄ってみてください。

 

沖縄CLIP フォトライター 岡部徳枝  https://okinawaclip.com/ja/detail/2211

INFORMATION

基本情報

郵便番号 901-2303
住所 沖縄県中頭郡北中城村仲順24番地
営業時間 10:00~18:00
定休日 土曜日
電話番号 098-989-5233
公式URL https://azamacoffeefarm.com/

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