城まんじゅう

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地域に愛される沖縄銘菓・北中城自慢の名産品「城まんじゅう」

沖縄本島中部・北中城村(きたなかぐすくそん)は、村内の穏やかな湾で育まれる「アーサー(ヒトエグサ)」という海藻の産地として知られています。周辺の高台には世界遺産・中城城跡(なかぐくすじょうあと)や18世紀中頃に建てられたとされる国指定重要文化財「中村家住宅」があり、県内外から人が訪れるエリアです。

 

 

世界遺産・中城城跡から車で5分ほどのところに、北中城の特産品「アーサー」を使った和菓子店『城(ぐすく)まんじゅう』があります。

沖縄県民にとって「アーサー」はお味噌汁や沖縄そばなどとあわせていただく馴染みのある食材ですが「スイーツに使う」という発想はあまり聞いたことがありません。

「海産物からおまんじゅう?」一体どのようなプロセスで誕生したのでしょうか。創業者の金城睦美(きんじょうむつみ)さんにお話を伺いました。



 

村外出身者の視点から見出した「アーサー」の可能性

 

ご主人の体調を考慮して近隣から「空気の美味しいところ」を求めて、北中城村の高台に引っ越してきた金城睦美さん。今からおよそ17年ほど前に沖縄では珍しい和菓子のお店をスタートさせました。

 

 

近所に世界遺産・中城城跡があり、よく散歩に訪れていた金城さんは「このお城の近くでおまんじゅうを売っていたらいいのに…」と、いつも考えていました。そこから

「そういえば北中城村の名産品ってなんだろう?」

という疑問が頭に浮かび調べてみることに。特産品である「アーサー」には出会えたものの、当時これといった名産品が見当たりませんでした。

そこから「アーサー」を使って何かできないかを考えるようになり、以前頭をよぎった「お城のそばにまんじゅうがあったら…」が再び蘇ります。

 

  

試行錯誤の末にたどり着いたアーサーを練り込んだ翡翠色の皮

 

とはいえ、金城さんはまんじゅうを作ったことがありません。たまたま訪れた首里のまんじゅう店で、店主の了承を得て間近で作り方を見る機会に恵まれました。

そこから「自分でも作れるかもしれない」と思いたち、金城さんのまんじゅう作りが本格的にスタート。

しかし、プロのまんじゅう作りを見せてもらったからといってすぐにうまくいくわけがありません。

 

 

それでも挫けることなく作り続けたのち、アーサーをまんじゅうの皮に練り込んで翡翠色に仕上げることにたどり着きました。

 

 

小麦粉とタピオカの独特なモチモチ感が楽しめ、月桃の香りに包まれた爽やかな風合いと控えめな甘さが決め手となり、ようやく販売への道筋が見えてきました。

 
 

完成したけれど認知されないもどかしさを乗り越えた先に、新たな課題と直面

 

ようやく完成したまんじゅうは、当初イメージした中城城に似合う名前をコンセプトに「城まんじゅう」と名付けられます。

最初は自宅で販売をスタート。目印は家の前に立てられたのぼり一本のみ。

なかなか売上が伸びず頭を抱えた金城さんは「まずは北中城村長に食べてもらおう!」とまんじゅう持参で役場へ向かいます。

地元の特産品「アーサー」から和菓子が誕生したことを知った当時の村長は大喜び。食べる前から「これは北中城の名産品だ!!!」と、その場にいた新聞記者に伝えたのでした。

新聞の効果もあって、一気に「城まんじゅう」は知名度を上げていきます。自宅では手狭になり北中城村の中心エリアの道路沿いに店舗を構えました。

 

 

販売するうちに透明パックに詰められたまんじゅうを見て「これじゃぁどこのまんじゅうかわからない」という疑問を抱きはじめます。しかしパッケージのプロに頼む資金の余裕はありません。納得のいかない金城さんは、とうとう自分で筆をとり絵を描き始めてお手製のパッケージを作成します。以来、県民にとってとても馴染みのあるパッケージが完成しました。

 

 

家族で力を合わせ、地域に根ざし愛されるまんじゅう店へ

 

夫婦二人で始めたまんじゅう店は地域の人に少しずつ受け入れられて、今では金城さんの妹さんと娘さんご夫婦が加わり5人体制で営んでいます。

店を切り盛りしていると地域の人からいろいろな声が届くように。

『甘いもの以外もあるといいのに』という声から生まれた「アーサいなり」。酢飯にアーサーを混ぜ込んでいなりに詰めるという、ありそうでなかったいなりずしは即座に地元民に受け入れられます。

行事には甘菓子と重箱がセットなのに『甘菓子しかないと別のお店にもいかないといけない』という声が届いて始めた「法事用の折詰・重箱料理」は旧暦行事など行事を大切にする県民のニーズに応えたサービスとして予約の電話がとまりません。

 

自分の住む街に「こんなのがあったらいいな」と浮かんだアイデアを形にし、地域の声を聞きながら家族の力を合わせて営んできた金城さん。

これからも地域のニーズに寄り添い続けながら、北中城の名産品「城まんじゅう」で笑顔の輪を広げていくでしょう。

 

沖縄CLIPフォトライター monobox(河野哲昌、こずえ) http://okinawaclip.com/ja/detail/711

中城城跡写真:沖縄CLIPフォトライター (株)村上佑写真事務所 https://okinawaclip.com/ja/detail/2046

INFORMATION

基本情報

郵便番号 901-2303
住所 沖縄県中頭郡北中城村仲順230
営業時間 9:00~17:00(売り切れ次第終了)
定休日 月曜定休
電話番号 098-935-3964
駐車場 あり

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